ここでは,大学で習う線形代数についての基本を説明していきます.また,対象は特に問いません.数学が苦手な方でも理解しやすいような例を利用しているので安心して読み進めてください.なお,当サイトの線形代数の進め方について知りたい方は以下をクリック.
この回では,行列式を解くためのサラスの方法について説明していきます.
キーワード:2次、3次、行列式、サラスの方法
サラスの方法
サラスの方法とは,行列式を直観的かつ楽に解くための方法です.また,サラスの方法を行列式に適用するときは,その行列式が2次・3次正方行列のときのみに限られます.4次以上の行列式を解く場合は、別の回で説明します.
またサラスの方法を理解する前に,行列式をそもそも知らない,行列式の定義が分からないあるいはサラスの方法の証明方法が知りたいという方は,先に以下を読むことをおすすめします.
この回では,サラスの方法の計算方法のみを説明していきます.
サラスの方法(2次正方行列)
2次正方行列に対するサラスの方法は以下になります。
\[ A = \begin{pmatrix} a_{11} & a_{12} \\ a_{21} & a_{22} \end{pmatrix} \]
とすると,サラスの方法は
\(det(A) = a_{11}a_{22} – a_{12}a_{21} \)
具体例で見ていきましょう.
\[ A = \begin{pmatrix} 1 & 2 \\ 3 & 4 \end{pmatrix} \]
上の行列式の値は,
det(A) = 1・4 – 2・3 = 4 – 6 = -2
となりました.簡単ですね.この方法を視覚化してみましょう.
いきなり手動ですみません(笑).
このように2次正方行列の場合は,赤と青の対角どうしでそれぞれ積を計算し,赤-青を求めましょう.
サラスの方法(3次正方行列)
3次正方行列に対するサラスの方法は以下になります。
\[ A = \begin{pmatrix} a_{11} & a_{12} & a_{13} \\ a_{21} & a_{22} & a_{23} \\ a_{31} & a_{32} & a_{33} \end{pmatrix} \]
とすると,サラスの方法は
\(det(A) = a_{11}a_{22}a_{33} + a_{13}a_{21}a_{32} + a_{12}a_{23}a_{31} -( a_{13}a_{22}a_{31} + a_{12}a_{21}a_{33} + a_{11}a_{23}a_{32}) \)
これも具体例で見ていきましょう.
\[ A = \begin{pmatrix} 1 & 2 & 3 \\ 4 & 5 & 6 \\ 7 & 8 & 9 \end{pmatrix} \]
上の行列式の値は,
det(A) = 1・5・9 + 3・4・8 + 2・6・7 – (3・5・7 + 2・4・9 + 1・6・8) = 225 – 225 = 0
これも視覚化してみると,
このように,それぞれの色の枠ごとで積をとり,赤+ピンク+黄緑 – (青+水色+黄色)を計算することによって求まります.
以上でサラスの方法の説明は終わりです.
まとめ
1.サラスの方法を適用するには元の行列が2次・3次正方行列のときのみである.
2.2次のサラスの方法
\[ A = \begin{pmatrix} a_{11} & a_{12} \\ a_{21} & a_{22} \end{pmatrix} \]
とすると
\(det(A) = a_{11}a_{22} – a_{12}a_{21} \)
3.3次のサラスの方法
\[ A = \begin{pmatrix} a_{11} & a_{12} & a_{13} \\ a_{21} & a_{22} & a_{23} \\ a_{31} & a_{32} & a_{33} \end{pmatrix} \]
とすると
\(det(A) = a_{11}a_{22}a_{33} + a_{13}a_{21}a_{32} + a_{12}a_{23}a_{31} -( a_{13}a_{22}a_{31} + a_{12}a_{21}a_{33} + a_{11}a_{23}a_{32}) \)
練習問題
1.以下の行列式の値を求めよ.
\[ (1) \begin{vmatrix} a & b & c \\ d & e & f \\ g & h & i \end{vmatrix} \]
\[ (2) \begin{vmatrix} cosθ & -sinθ \\ sinθ & cosθ \end{vmatrix} \]
解答はこちら → 練習問題解答
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