線形代数 行列の和と定数倍(スカラー倍)

線形代数

ここでは,大学で習う線形代数についての基本を説明していきます.また,対象は特に問いません.数学が苦手な方でも理解しやすいような例を利用しているので安心して読み進めてください.なお,当サイトの線形代数の進め方について知りたい方は以下をクリック.

線形代数の進め方

この回では,行列計算の基本である和・差・定数倍(スカラー倍)について説明していきます.

キーワード:和、型、定数、スカラー、差

行列の和

ここでは行列の和の計算方法について説明していきます.とはいっても行列の和において注意すべき点はたった一つだけです.

それは,同じ型の行列どうしでしか和をとることが出来ないということです.(行列の型について分からない方はこちら → 行列とは)

具体的な計算方法は,それぞれの行列の一つ一つの成分の和をとるだけです.

例として,以下の行列A,B,CのA+BとA+Cを考えてみます.

\[A = \begin{pmatrix} 1 & 0 \\ 0 & 1 \end{pmatrix} B = \begin{pmatrix} 0 & 1 \\ 1 & 0 \end{pmatrix} C = \begin{pmatrix} 1 & 0 & 0 \\ 0 & 1 & 0 \\ 0 & 0 & 1 \end{pmatrix} \]

A+Bについては,Aが2行2列の行列(2次正方行列),Bが2行2列の行列(2次正方行列)なのでこれらの和をとることは可能です(互いの型が同じ).

よって一つ一つの成分に着目すると,計算は以下になります.

\[A + B = \begin{pmatrix} 1 & 0 \\ 0 & 1 \end{pmatrix} + \begin{pmatrix} 0 & 1 \\ 1 & 0 \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} 1+0 & 0+1 \\ 0 + 1 & 1 + 0 \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} 1 & 1 \\ 1 & 1 \end{pmatrix} \]

その一方で,A+CについてはAが2行2列の行列(2次正方行列),Cは3行3列の行列(3次正方行列)なのでこれらは計算することが出来ません(互いの型が異なる).

一般に行列の和は,以下のようになります.

\[A = \begin{pmatrix} a & b \\ c & d \end{pmatrix} B = \begin{pmatrix} e & f \\ g & h \end{pmatrix}\]

\[A + B = \begin{pmatrix} a + e & b + f \\ c + g & d + h \end{pmatrix} \]

重要なのは,互いに同じ型のときのみ計算できるという点です.

また,行列の和はどのような順番で計算しても結果は変わりません.つまり,A+BもB+Aも結果は変わらないということです.

行列の定数倍(スカラー倍)

ここでは行列の定数倍(またはスカラー倍)について説明します.

以下の例を考えてみます.

\[ A = 2\begin{pmatrix} 3 & 6 \\ 9 & 7 \end{pmatrix} \]

この場合,行列の各成分をすべて定数倍します.

\[ A = \begin{pmatrix} 2 \times 3 & 2 \times 6 \\ 2 \times 9 & 2 \times 7 \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} 6 & 12 \\ 18 & 14 \end{pmatrix} \]

一般に行列の定数倍は,任意の定数をkとすると以下になります.

\[ A = \begin{pmatrix} a & b \\ c & d \end{pmatrix} \]

\[ kA = \begin{pmatrix} ka & kb \\ kc & kd \end{pmatrix} \]

また,kは前から掛けようが(kA),後ろから掛けようが(Ak)結果は同じになります.

行列の差

では行列の差はどうなるでしょうか.例として以下の計算をします.

\[ \begin{pmatrix} 5 & 3 \\ 2 & 4 \end{pmatrix} \ – \begin{pmatrix} 4 & 3 \\ 2 & 3 \end{pmatrix} \]

実は,今までの行列の和と定数倍を利用すれば差を計算できます.

つまり,マイナス部分(-)を定数倍として-1倍と読みかえると,後は和をとるだけです.

\[ \begin{pmatrix} 5 & 3 \\ 2 & 4 \end{pmatrix} \ – \begin{pmatrix} 4 & 3 \\ 2 & 3 \end{pmatrix} \ =\begin{pmatrix} 5 & 3 \\ 2 & 4 \end{pmatrix} \ + \begin{pmatrix} -4 & -3 \\ -2 & -3 \end{pmatrix} \ = \begin{pmatrix} 1 & 0 \\ 0 & 1 \end{pmatrix} \]

もちろん,最初から普通の計算のように差をとることもOKです.しかし,裏の背景には定数倍と和の考え方が理屈になっていることを覚えておきましょう.

演算法則

今までの計算方法をまとめると,以下のような演算法則が成立します.

A, B, Cは同じ型の任意の行列, k, lは任意の定数, Oは零行列とする.

(A + B) + C = A + (B + C) (結合法則)

A + B = B + A (分配法則)

k(A + B) = kA + kB

(k + l)A = kA + lA

(kl)A = k(lA)

1A = A, (-1)A = -A

A + O = A, A – A = O, 0A = O

なお,零行列についてはこちら → 行列とは

零行列とは全ての成分が0の行列のことを指します.

まとめ

1.行列の和は同じ型のときのみ計算でき,各成分のそれぞれの和をとる.

2.行列の定数倍(スカラー倍)は各成分すべてに任意の定数を掛ける.

3.行列の差は,-を-1倍として考え,最後はただの和の計算.

練習問題

1.以下の行列の和を計算しなさい.(初めのうちは,行列計算するとき簡単で良いので各行列の型を確認しよう)

\[(1) \begin{pmatrix} 1 & 1 & 2 \\ 3 & 5 & 8 \end{pmatrix} + \begin{pmatrix} 13 & 23 & 36 \\ 59 & 95 & 154 \end{pmatrix}\]

\[(2) \begin{pmatrix} 1 & 2 \\ 3 & 4 \end{pmatrix} + \begin{pmatrix} 5 & 6 \\ 7 & 8 \end{pmatrix} + \begin{pmatrix} 9 & 10 \\ 11 & 12 \end{pmatrix} \]

2. 以下の関数の値を求めなさい.(ヒント:関数f(x, y)の x, yに与えられた条件を代入する)

\[f(x, y) = 2x + y, x = \begin{pmatrix} 1 & 0 \\ 0 & 1 \end{pmatrix}, y = \begin{pmatrix} 0 & 2 \\ 2 & 0 \end{pmatrix} \]

解答はこちら→練習問題解答

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