線形代数 練習問題解答

線形代数

ここでは,線形代数の練習問題について解答していきます.

行列とは

1.以下の各行列の型を答えなさい.また,各行列の成分の中で自分の好きな箇所を3つずつ選んで,その成分と値を書きなさい.また各行列の中で,正方行列があれば,その行列を記号で答えなさい.

\[A = \begin{pmatrix} a & b \\ c & d \end{pmatrix} B = \begin{pmatrix} a & b & c \\ d & e & f \\ g & h & i \\ j & k & l \end{pmatrix} C = \begin{pmatrix} a & b & c \\ d & e & f \\ g & h & i \end{pmatrix}\]

ans.

※成分とその値は,どの成分でもOK.

Aの型:2行2列 成分とその値:(1,1)成分 a, (2,1)成分 c, (2,2)成分 d

Bの型:4行3列 成分とその値:(2,2)成分 e, (3,1)成分 g, (4,2)成分 k

Cの型:3行3列 成分とその値:(1,3)成分 c, (2,1)成分 d, (3,3)成分 i

正方行列:AとC (Aは2次正方行列、Cは3次正方行列)

行列の和と定数倍(スカラー倍)

1.以下の行列の和を計算しなさい.(初めのうちは,行列計算するとき簡単で良いので各行列の型を確認しよう)

\[(1) \begin{pmatrix} 1 & 1 & 2 \\ 3 & 5 & 8 \end{pmatrix} + \begin{pmatrix} 13 & 23 & 36 \\ 59 & 95 & 154 \end{pmatrix}\]

\[(2) \begin{pmatrix} 1 & 2 \\ 3 & 4 \end{pmatrix} + \begin{pmatrix} 5 & 6 \\ 7 & 8 \end{pmatrix} + \begin{pmatrix} 9 & 10 \\ 11 & 12 \end{pmatrix} \]

ans.

\[(1) \begin{pmatrix} 1+13& 1+23 & 2+36 \\ 3+59 & 5+95 & 8+154 \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} 14 & 24 & 38 \\ 62 & 100 & 162 \end{pmatrix}\]

\[(2) \begin{pmatrix} 1+5+9 & 2+6+10 \\ 3+7+11 & 4+8+12 \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} 15 & 18 \\ 21 & 24 \end{pmatrix} \]

2. 以下の関数の値を求めなさい.

\[f(x, y) = 2x + y, x = \begin{pmatrix} 1 & 0 \\ 0 & 1 \end{pmatrix}, y = \begin{pmatrix} 0 & 2 \\ 2 & 0 \end{pmatrix} \]

ヒント:関数f(x, y)の x, yに与えられた条件を代入する.

ans.

f(x,y)=2x+yに与えられた行列x, yを代入

\[ f(x, y) = 2\begin{pmatrix} 1 & 0 \\ 0 & 1 \end{pmatrix} + \begin{pmatrix} 0 & 2 \\ 2 & 0 \end{pmatrix} \ = \begin{pmatrix} 2 & 0 \\ 0 & 2 \end{pmatrix} + \begin{pmatrix} 0 & 2 \\ 2 & 0 \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} 2 & 2 \\ 2 & 2 \end{pmatrix}\]

行列の積

1.以下の行列の積は計算可能か答えなさい.計算可能な場合,積を計算しなさい.そうでない場合,なぜ積を計算できないのか答えなさい.

\[(1) \begin{pmatrix} 3 & 2 \\ 5 & 4 \end{pmatrix}\begin{pmatrix} 8 & 1 \\ 2 & 6 \end{pmatrix} \]

\[(2) \begin{pmatrix} 5 & 8 \\ 10 & 11 \end{pmatrix}\begin{pmatrix} 7 & 4 \\ 2 & 1 \\ 3 & 10 \end{pmatrix} \]

\[(3) \begin{pmatrix} 4 & 2 \\ 9 & 3 \\ 7 & 10 \end{pmatrix}\begin{pmatrix} 2 & 1 & 4 \\ 5 & 6 & 5 \end{pmatrix} \]

ans.

\[(1) \begin{pmatrix} 3 & 2 \\ 5 & 4 \end{pmatrix}\begin{pmatrix} 8 & 1 \\ 2 & 6 \end{pmatrix} = \begin{pmatrix}3 \times 8 + 2 \times 2 & 3 \times 1 + 2 \times 6 \\ 5 \times 8 + 4 \times 2 & 5 \times 1 + 4 \times 6 \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} 28 & 15 \\ 48 & 29 \end{pmatrix} \]

\[(3) \begin{pmatrix} 4 & 2 \\ 9 & 3 \\ 7 & 10 \end{pmatrix}\begin{pmatrix} 2 & 1 & 4 \\ 5 & 6 & 5 \end{pmatrix} = \begin{pmatrix}4 \times 2 + 2 \times 5 & 4 \times 1 + 2 \times 6 & 4 \times 4 + 2\times 5 \\ 9 \times 2 + 3 \times 5 & 9 \times 1 + 3 \times 6 & 9 \times 4 + 3 \times 5 \\ 7 \times 2 + 10 \times 5 & 7 \times 1 + 10 \times 6 & 7 \times 4 + 10\times 5 \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} 18 & 16 & 26 \\ 33 & 27 & 51 \\ 64 & 67 & 78 \end{pmatrix} \]

計算できないもの:(2) 

理由:(2)では2行2列の行列に対して,3行2列の行列との積をとろうとしており,各列と行が一致しないため,積をとることはできない.

※補足:行列の掛ける順番を逆にするとできるようになります.時間がある人はやってみよう.

正則行列

1.行列Aが以下のとき,問いに答えなさい.(ヒント1:A^{3}の結果に注目.ヒント2:Iは何乗しても変わらない.ヒント3:A^{100}はA^{3}を使ってどう表される?)

\[A = \begin{pmatrix} \frac{1}{2} & \frac{\sqrt{3}}{2} \\ -\frac{\sqrt{3}}{2} & \frac{1}{2} \end{pmatrix} \]

$$(1) A^{3} (2) A^{100}$$

ans.

\[(1) A ^{3} = \begin{pmatrix} \frac{1}{2} & \frac{\sqrt{3}}{2} \\ -\frac{\sqrt{3}}{2} & \frac{1}{2} \end{pmatrix} \begin{pmatrix} \frac{1}{2} & \frac{\sqrt{3}}{2} \\ -\frac{\sqrt{3}}{2} & \frac{1}{2} \end{pmatrix} \begin{pmatrix} \frac{1}{2} & \frac{\sqrt{3}}{2} \\ -\frac{\sqrt{3}}{2} & \frac{1}{2} \end{pmatrix} \]

\[ = \begin{pmatrix} -\frac{1}{2} & \frac{\sqrt{3}}{2} \\ -\frac{\sqrt{3}}{2} & -\frac{1}{2} \end{pmatrix} \begin{pmatrix} \frac{1}{2} & \frac{\sqrt{3}}{2} \\ -\frac{\sqrt{3}}{2} & \frac{1}{2} \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} -1 & 0 \\ 0 & -1 \end{pmatrix} = -I \]

$$ (2) (1)より,A^{3} = -Iであることから,A^{100} = (A^{3})^{33}A = (-I)^{33}A = -IA = -A つまり,$$

\[ A^{100} = -A = \begin{pmatrix} -\frac{1}{2} & -\frac{\sqrt{3}}{2} \\ \frac{\sqrt{3}}{2} & -\frac{1}{2} \end{pmatrix} \]

2.\(A\),\(X\)はともにn次正方行列とする.\(AX = XA = I\)が成り立つとき,\(X\)はただ一つしか存在しないことを証明しなさい.(ヒント:今回の内容に書いてある)

ans.

\(AY = YA = I\)が成り立つn次正方行列\(Y\)が存在すると仮定する.このとき,\(Y = YI\)が成り立つ.

また,\(AX = XA = I\)から,\(I = AX\)より,\(Y = YI = Y(AX)\)が成り立つ.

次に,\(Y = YI = Y(AX) = (YA)X\)が成り立つのは自明であるので,\(AY = YA = I\)から,\(YA = I\)より,

\(Y = YI = Y(AX) = (YA)X = IX = X \)

以上より,\(A\)の逆行列はただ一つしか存在しない.

転置行列

1. \((^{t}X)^{-1} = ^{t}(X^{-1})\)が成り立つことを証明しなさい.ただし,\(X\)と\(^{t}X\)はともに正則であるとする.(ヒント:今回の記事にある)

ans.

\((^{t}X)^{-1} = ^{t}(X^{-1})\)が成立することを証明するには,以下が成立することを証明すれば良い.

\(^{t}X ^{t}(X^{-1}) = ^{t}(X^{-1}) ^{t}X = I\)

これを計算していくと,

\(^{t}X ^{t}(X^{-1}) = ^{t}(X^{-1}X) = ^{t}I = I \)

\(^{t}(X^{-1}) ^{t}X = ^{t}(XX^{-1}) = ^{t}I = I\)

よって, \((^{t}X)^{-1} = ^{t}(X^{-1})\)が成立する.

掃き出し法

1.以下の連立一次方程式を掃き出し法によって解きなさい.((2)のヒント:3番目の行基本変形を使うと良い)

\[ (1) \left \{\begin{array}{} x_{1} -2x_{2}+ 2x_{3}&= 1 \\ -2x_{1} + 2x_{2} + x_{3}&= -2 \\ 2x_{1} + x_{2} -2x_{3}&= 2\end{array} \right . \]

ans.

拡大係数行列は以下です.

\[ \begin{pmatrix} 1 & -2 & 2 & 1 \\ -2 & 2 & 1 & -2 \\ 2 & 1 & -2 & 2 \end{pmatrix} \]

これを掃き出し法により,階段化していきます.

まず,零ベクトルでない列で初めに出てくるのは第1列です.次に,(1, 1)成分は1かつ第1行にあります.よって,第1列の(1, 1)成分以降を0にするために,第1行を仮定的に2倍したものと第2行との和をとることと,第1行を仮定的に-2倍したものと第3行との和をとります.

\[ \begin{pmatrix} 1 & -2 & 2 & 1 \\ 0 & -2 & 5 & 0 \\ 0 & 5 & -6 & 0 \end{pmatrix} \]

次に,第2列の第2行以下のうち,0でない値が初めて出てくるのは(2, 2)成分の-2です.しかし,これは1でないので,第2行を-1/2倍すれば良いです.

\[ \begin{pmatrix} 1 & -2 & 2 & 1 \\ 0 & 1 & -\frac{5}{2} & 0 \\ 0 & 5 & -6 & 0 \end{pmatrix} \]

これで,第2列の(2, 2)成分以降を0にできます.よって,第2行を仮定的に-5倍したものと第3行との和をとります.

\[ \begin{pmatrix} 1 & -2 & 2 & 1 \\ 0 & 1 & -\frac{5}{2} & 0 \\ 0 & 0 & \frac{13}{2} & 0 \end{pmatrix} \]

第3列は(3, 3)成分しかないので,これを1にするために第3行を2/13倍します.

\[ \begin{pmatrix} 1 & -2 & 2 & 1 \\ 0 & 1 & -\frac{5}{2} & 0 \\ 0 & 0 & 1 & 0 \end{pmatrix} \]

あとは,値が1である成分の上の要素を全て0にすれば良いので,まず,第2行を仮定的に2倍したものと第1行との和をとります.

\[ \begin{pmatrix} 1 & 0 & -3 & 1 \\ 0 & 1 & -\frac{5}{2} & 0 \\ 0 & 0 & 1 & 0 \end{pmatrix} \]

最後に,第3行を仮定的に5/2倍したものと第2行との和をとる,第3行を仮定的に3倍したものと第1行との和をとれば良いです.

\[ \begin{pmatrix} 1 & 0 & 0 & 1 \\ 0 & 1 & 0 & 0 \\ 0 & 0 & 1 & 0 \end{pmatrix} \]

以上より,各方程式に戻すと解は,

\(x_{1} = 1,x_{2} = 0,x_{3} = 0\)

\[ (2) \left \{\begin{array}{} x_{1} + 2x_{2} -5x_{3} -x_{4}&= 0 \\ 2x_{1} + 3x_{2} -7x_{3} -4x_{4}&= 0 \\ x_{1} + x_{2} -2x_{3} + 3x_{4}&= 0 \\ -x_{1} -3x_{2} + 2x_{3} + 5x_{4}&= 0 \end{array} \right . \]

ans.

拡大係数行列は以下です.

\[ \begin{pmatrix} 1 & 2 & -5 & -1 & 0 \\ 2 & 3 & -7 & -4 & 0 \\ 1 & 1 & -2 & 3 & 0 \\ -1 & -3 & 2 & 5 & 0 \end{pmatrix} \]

まず,零ベクトルでない列で初めに出てくるのは第1列です.次に,(1, 1)成分は1かつ第1行にあります.よって,第1列の(1, 1)成分以降を0にするために,第1行を仮定的に-2倍したものと第2行との和をとる,第1行を仮定的に-1倍したものと第3行との和をとる, 第1行を仮定的に1倍したものと第4行との和をとります.

\[ \begin{pmatrix} 1 & 2 & -5 & -1 & 0 \\ 0 & -1 & 3 & -2 & 0 \\ 0 & -1 & 3 & 4 & 0 \\ 0 & -1 & -3 & 4 & 0 \end{pmatrix} \]

次に,第2列の第2行以下のうち,0でない値が初めて出てくるのは(2, 2)成分の-1です.しかし,これは1でないので,第2行を-1倍すれば良いです.

\[ \begin{pmatrix} 1 & 2 & -5 & -1 & 0 \\ 0 & 1 & -3 & 2 & 0 \\ 0 & -1 & 3 & 4 & 0 \\ 0 & -1 & -3 & 4 & 0 \end{pmatrix} \]

これで,第2列の(2, 2)成分以降を0にできます.よって,第2行を仮定的に1倍したものと第3行との和をとる, 第2行を仮定的に1倍したものと第4行との和をとります.

\[ \begin{pmatrix} 1 & 2 & -5 & -1 & 0 \\ 0 & 1 & -3 & 2 & 0 \\ 0 & 0 & 0 & 6 & 0 \\ 0 & 0 & -6 & 6 & 0 \end{pmatrix} \]

次に,第3列の第3行以下のうち,0でない値が初めて出てくるのは(4, 3)成分の-6です.しかし,これは第4行にあります.第3行にないと計算できません.ここで,行基本変形の3番目より,第3行と4行を入れ替えます.

\[ \begin{pmatrix} 1 & 2 & -5 & -1 & 0 \\ 0 & 1 & -3 & 2 & 0 \\ 0 & 0 & -6 & 6 & 0 \\ 0 & 0 & 0 & 6 & 0 \end{pmatrix} \]

ここで,(3, 3)成分は-6なので,1にするために,第3行を-1/6倍します.

\[ \begin{pmatrix} 1 & 2 & -5 & -1 & 0 \\ 0 & 1 & -3 & 2 & 0 \\ 0 & 0 & 1 & -1 & 0 \\ 0 & 0 & 0 & 6 & 0 \end{pmatrix} \]

これで,第3列の(3, 3)成分以降を0にできます.ですが,既に(4, 3)成分は0なので何もする必要はないです.よって次に,第4列の第4行以下のうち,0でない値が初めて出てくるのは(4, 4)成分の6です.しかし,これは1でないので,第4行を1/6倍すれば良いです.

\[ \begin{pmatrix} 1 & 2 & -5 & -1 & 0 \\ 0 & 1 & -3 & 2 & 0 \\ 0 & 0 & 1 & -1 & 0 \\ 0 & 0 & 0 & 1 & 0 \end{pmatrix} \]

あとは, 値が1である成分の上の要素を全て0にすれば良いので,まず,第2行を仮定的に-2倍したものと第1行との和をとります.

\[ \begin{pmatrix} 1 & 0 & 1 & -5 & 0 \\ 0 & 1 & -3 & 2 & 0 \\ 0 & 0 & 1 & -1 & 0 \\ 0 & 0 & 0 & 1 & 0 \end{pmatrix} \]

次に,第3行を仮定的に3倍したものと第2行との和をとる,第3行を仮定的に-1倍したものと第1行との和をとります.

\[ \begin{pmatrix} 1 & 0 & 0 & -4 & 0 \\ 0 & 1 & 0 & -1 & 0 \\ 0 & 0 & 1 & -1 & 0 \\ 0 & 0 & 0 & 1 & 0 \end{pmatrix} \]

最後に,第4行を仮定的に1倍したものと第3行との和をとる,第4行を仮定的に1倍したものと第2行との和をとる,第4行を仮定的に4倍したものと第1行との和をとります.

\[ \begin{pmatrix} 1 & 0 & 0 & 0 & 0 \\ 0 & 1 & 0 & 0 & 0 \\ 0 & 0 & 1 & 0 & 0 \\ 0 & 0 & 0 & 1 & 0 \end{pmatrix} \]

以上より,各方程式に戻すと解は,

\(x_{1} = 0,x_{2} = 0,x_{3} = 0,x_{4} = 0\)

またこの連立一次方程式のように,右辺が全て0であるものを同次形の連立一次方程式といい,今回の解のように全ての解が0であるとき特別に自明な解と呼びます.

連立一次方程式の解の存在条件

1.以下の拡大係数行列が解を持つかどうか,掃き出し法により階段化し,その真偽を確かめよ.

\[ (1) \begin{pmatrix} 1 & 1 & 1 & 3 \\ 2 & 1 & 2 & 5 \\ 4 & 2 & 6 & 12 \end{pmatrix} \]

ans.

階段化すると,

\[ \begin{pmatrix} 1 & 1 & 1 & 3 \\ 2 & 1 & 2 & 5 \\ 4 & 2 & 6 & 12 \end{pmatrix} → \begin{pmatrix} 1 & 1 & 1 & 3 \\ 0 & -1 & 0 & -1 \\ 0 & -2 & 2 & 0 \end{pmatrix}→ \begin{pmatrix} 1 & 1 & 1 & 3 \\ 0 & 1 & 0 & 1 \\ 0 & -2 & 2 & 0 \end{pmatrix}→ \begin{pmatrix} 1 & 1 & 1 & 3 \\ 0 & 1 & 0 & 1 \\ 0 & 0 & 2 & 2 \end{pmatrix}\]

\[ →\begin{pmatrix} 1 & 1 & 1 & 3 \\ 0 & 1 & 0 & 1 \\ 0 & 0 & 1 & 1 \end{pmatrix}→ \begin{pmatrix} 1 & 0 & 1 & 2 \\ 0 & 1 & 0 & 1 \\ 0 & 0 & 1 & 1 \end{pmatrix}→ \begin{pmatrix} 1 & 0 & 0 & 1 \\ 0 & 1 & 0 & 1 \\ 0 & 0 & 1 & 1 \end{pmatrix} \]

よって係数行列と拡大係数行列の階数はともに3であるので解を持つ.(ちなみに解は,\(x_{1} = 1,x_{2} = 1,x_{3} = 1\))

\[ (2) \begin{pmatrix} 1 & -1 & 1 & 2 \\ 2 & 1 & -2 & 3 \\ 1 & 5 & -7 & 1 \end{pmatrix} \]

ans.

階段化すると,

\[ \begin{pmatrix} 1 & -1 & 1 & 2 \\ 2 & 1 & -2 & 3 \\ 1 & 5 & -7 & 1 \end{pmatrix}→ \begin{pmatrix} 1 & -1 & 1 & 2 \\ 0 & 3 & -4 & -1 \\ 0 & 6 & -8 & -1 \end{pmatrix}→ \begin{pmatrix} 1 & -1 & 1 & 2 \\ 0 & 1 & -\frac{4}{3} & -\frac{1}{3} \\ 0 & 6 & -8 & -1 \end{pmatrix}→ \begin{pmatrix} 1 & -1 & 1 & 2 \\ 0 & 1 & -\frac{4}{3} & -\frac{1}{3} \\ 0 & 0 & 0 & 1 \end{pmatrix} \]

よって係数行列の階数2に対して拡大係数行列の階数3であるので,解は存在しない.

連立一次方程式の解の種類

1.以下の連立一次方程式の解を掃き出し法によって確かめよ.

\[ (1)\left \{\begin{array}{} x_{1} -x_{2} + x_{3} &= 2 \\ 2x_{1} + x_{2} -2x_{3} &= 3 \\ x_{1} + 5x_{2} -7x_{3} &= 1 \end{array} \right . \]

拡大係数行列は以下である.

\[ \begin{pmatrix} 1 & -1 & 1 & 2 \\ 2 & 1 & -2 & 3 \\ 1 & 5 & -7 & 1 \end{pmatrix} \]

階段化すると,

\[ \begin{pmatrix} 1 & -1 & 1 & 2 \\ 2 & 1 & -2 & 3 \\ 1 & 5 & -7 & 1 \end{pmatrix}→ \begin{pmatrix} 1 & -1 & 1 & 2 \\ 0 & 3 & -4 & -1 \\ 0 & 6 & -8 & -1 \end{pmatrix}→ \begin{pmatrix} 1 & -1 & 1 & 2 \\ 0 & 3 & -4 & -1 \\ 0 & 6 & -8 & -1 \end{pmatrix}\]

\[ →\begin{pmatrix} 1 & -1 & 1 & 2 \\ 0 & 1 & -\frac{4}{3} & -\frac{1}{3} \\ 0 & 6 & -8 & -1 \end{pmatrix}→ \begin{pmatrix} 1 & -1 & 1 & 2 \\ 0 & 1 & -\frac{4}{3} & -\frac{1}{3} \\ 0 & 0 & 0 & 1 \end{pmatrix} \]

最後の等式において,\(0 = 1\)となるのでこれは矛盾している.

よって解は存在しない.

※係数行列と拡大係数行列の階数が異なるから解は存在しないでもOK.

\[ (2)\left \{\begin{array}{} 3x_{1} +x_{2} + 3x_{3} -2x_{4} &= -2 \\ x_{1} + x_{2} + 3x_{3} + 4x_{4} &= -6 \\ x_{1} + 2x_{2} +4x_{3} + x_{4} &= -8 \end{array} \right . \]

ans.

拡大係数行列は以下である.

\[ \begin{pmatrix} 3 & 1 & 3 & -2 & -2 \\ 1 & 1 & 3 & 4 & -6 \\ 1 & 2 & 4 & 1 & -8 \end{pmatrix} \]

階段化すると(2回目の変形で第1行と第2行を入れ替えている部分に注目),

\[ \begin{pmatrix} 3 & 1 & 3 & -2 & -2 \\ 1 & 1 & 3 & 4 & -6 \\ 1 & 2 & 4 & 1 & -8 \end{pmatrix}→ \begin{pmatrix} 1 & 1 & 3 & 4 & -6 \\ 3 & 1 & 3 & -2 & -2 \\ 1 & 2 & 4 & 1 & -8 \end{pmatrix}→ \begin{pmatrix} 1 & 1 & 3 & 4 & -6 \\ 0 & -2 & -6 & -14 & 16 \\ 0 & 1 & 1 & -3 & -2 \end{pmatrix} \]

\[ →\begin{pmatrix} 1 & 1 & 3 & 4 & -6 \\ 0 & 1 & 3 & 7 & -8 \\ 0 & 1 & 1 & -3 & -2 \end{pmatrix}→ \begin{pmatrix} 1 & 1 & 3 & 4 & -6 \\ 0 & 1 & 3 & 7 & -8 \\ 0 & 0 & -2 & -10 & 6 \end{pmatrix}→ \begin{pmatrix} 1 & 1 & 3 & 4 & -6 \\ 0 & 1 & 3 & 7 & -8 \\ 0 & 0 & 1 & 5 & -3 \end{pmatrix} \]

\[→ \begin{pmatrix} 1 & 0 & 0 & -3 & 2 \\ 0 & 1 & 3 & 7 & -8 \\ 0 & 0 & 1 & 5 & -3 \end{pmatrix}→ \begin{pmatrix} 1 & 0 & 0 & -3 & 2 \\ 0 & 1 & 0 & -8 & 1 \\ 0 & 0 & 1 & 5 & -3 \end{pmatrix} \]

ここで,\(x_{4} = c (cは任意定数)\)とおくと,以下の等式が成り立つ.

\[ \left \{\begin{array}{} x_{1} -3c &= 2 \\ x_{2} -8c &= 1 \\ x_{3} +5c &= -3 \end{array} \right . \]

よって解は無限個存在し,以下のように表される.

\(x_{1} = 2+3c,x_{2} = 1+8c,x_{3} = -3-5c,x_{4} = c\)

2.以下の同次形の連立一次方程式の解の種類を判定せよ.

\[ (1) \left \{\begin{array}{} x_{1} + 2x_{2} -5x_{3} -x_{4}&= 0 \\ 2x_{1} + 3x_{2} -7x_{3} -4x_{4}&= 0 \\ x_{1} + x_{2} -2x_{3} + 3x_{4}&= 0 \\ -x_{1} -3x_{2} + 2x_{3} + 5x_{4}&= 0 \end{array} \right . \]

ans.

拡大係数行列は以下である.

\[ \begin{pmatrix} 1 & 2 & -5 & -1 & 0 \\ 2 & 3 & -7 & -4 & 0 \\ 1 & 1 & -2 & 3 & 0 \\ -1 & -3 & 2 & 5 & 0 \end{pmatrix} \]

階段化すると,

\[ \begin{pmatrix} 1 & 2 & -5 & -1 & 0 \\ 2 & 3 & -7 & -4 & 0 \\ 1 & 1 & -2 & 3 & 0 \\ -1 & -3 & 2 & 5 & 0 \end{pmatrix}→ \begin{pmatrix} 1 & 2 & -5 & -1 & 0 \\ 0 & -1 & 3 & -2 & 0 \\ 0 & -1 & 3 & 4 & 0 \\ 0 & -1 & -3 & 4 & 0 \end{pmatrix}→ \begin{pmatrix} 1 & 2 & -5 & -1 & 0 \\ 0 & 1 & -3 & 2 & 0 \\ 0 & -1 & 3 & 4 & 0 \\ 0 & -1 & -3 & 4 & 0 \end{pmatrix} \]

\[→ \begin{pmatrix} 1 & 2 & -5 & -1 & 0 \\ 0 & 1 & -3 & 2 & 0 \\ 0 & 0 & 0 & 6 & 0 \\ 0 & 0 & -6 & 6 & 0 \end{pmatrix}→ \begin{pmatrix} 1 & 2 & -5 & -1 & 0 \\ 0 & 1 & -3 & 2 & 0 \\ 0 & 0 & -6 & 6 & 0 \\ 0 & 0 & 0 & 6 & 0 \end{pmatrix}→ \begin{pmatrix} 1 & 2 & -5 & -1 & 0 \\ 0 & 1 & -3 & 2 & 0 \\ 0 & 0 & 1 & -1 & 0 \\ 0 & 0 & 0 & 6 & 0 \end{pmatrix} \]

\[→ \begin{pmatrix} 1 & 2 & -5 & -1 & 0 \\ 0 & 1 & -3 & 2 & 0 \\ 0 & 0 & 1 & -1 & 0 \\ 0 & 0 & 0 & 1 & 0 \end{pmatrix} \]

よって係数行列の階数が4でかつ未知数の数も4であるので,自明な解\(x=0\)を持つ.

\[ (2) \left \{\begin{array}{} 12x_{1} + 5x_{2} +2x_{3} -9x_{4}&= 0 \\ 11x_{1} + 4x_{2} +3x_{3} -10x_{4}&= 0 \\ 3x_{1} + x_{2} +x_{3} -3x_{4}&= 0 \end{array} \right . \]

ans.

この同次形の連立一次方程式の係数行列は3行4列であるので,3 < 4より,無限個の解を持つ.

逆行列の求め方

1.以下の行列の逆行列を求めよ.もし逆行列が存在しない場合,その根拠を示せ.

\[(1)\begin{pmatrix} 1 & 3 \\ 2 & 4 \end{pmatrix} \]

ans.

以下の行列を考える.

\[\begin{pmatrix} 1 & 3 & 1 & 0 \\ 2 & 4 & 0 & 1 \end{pmatrix} \]

階段化すると,

\[\begin{pmatrix} 1 & 3 & 1 & 0 \\ 2 & 4 & 0 & 1 \end{pmatrix}→ \begin{pmatrix} 1 & 3 & 1 & 0 \\ 0 & -2 & -2 & 1 \end{pmatrix}→ \begin{pmatrix} 1 & 3 & 1 & 0 \\ 0 & 1 & 1 & -\frac{1}{2} \end{pmatrix}→ \begin{pmatrix} 1 & 0 & -2 & \frac{3}{2} \\ 0 & 1 & 1 & -\frac{1}{2} \end{pmatrix} \]

よって逆行列は

\[ \begin{pmatrix} -2 & \frac{3}{2} \\ 1 & -\frac{1}{2} \end{pmatrix} \]

\[(2)\begin{pmatrix} 2 & 1 & 0 \\ 0 & 1 & 1 \\ 2 & 0 & -1 \end{pmatrix} \]

ans.

以下の行列を考える.

\[\begin{pmatrix} 2 & 1 & 0 & 1 & 0 & 0 \\ 0 & 1 & 1 & 0 & 1 & 0 \\ 2 & 0 & -1 & 0 & 0 & 1 \end{pmatrix} \]

階段化すると,

\[\begin{pmatrix} 2 & 1 & 0 & 1 & 0 & 0 \\ 0 & 1 & 1 & 0 & 1 & 0 \\ 2 & 0 & -1 & 0 & 0 & 1 \end{pmatrix}→ \begin{pmatrix} 1 & \frac{1}{2} & 0 & \frac{1}{2} & 0 & 0 \\ 0 & 1 & 1 & 0 & 1 & 0 \\ 2 & 0 & -1 & 0 & 0 & 1 \end{pmatrix}→ \begin{pmatrix} 1 & \frac{1}{2} & 0 & \frac{1}{2} & 0 & 0 \\ 0 & 1 & 1 & 0 & 1 & 0 \\ 0 & -1 & -1 & -1 & 0 & 1 \end{pmatrix} \]

\[→ \begin{pmatrix} 1 & \frac{1}{2} & 0 & \frac{1}{2} & 0 & 0 \\ 0 & 1 & 1 & 0 & 1 & 0 \\ 0 & 0 & 0 & -1 & 1 & 1 \end{pmatrix} \]

よって,階段化しても単位行列にならないので,逆行列は存在しない.

\[(3)\begin{pmatrix} 2 & 3 & 1 \\ 5 & 3 & 2 \\ 0 & 8 & 1 \end{pmatrix} \]

ans.

以下の行列を考える.

\[\begin{pmatrix} 2 & 3 & 1 & 1 & 0 & 0\\ 5 & 3 & 2 & 0 & 1 & 0 \\ 0 & 8 & 1 & 0 & 0 & 1 \end{pmatrix} \]

階段化すると,

\[\begin{pmatrix} 2 & 3 & 1 & 1 & 0 & 0\\ 5 & 3 & 2 & 0 & 1 & 0 \\ 0 & 8 & 1 & 0 & 0 & 1 \end{pmatrix}→ \begin{pmatrix} 1 & \frac{3}{2} & \frac{1}{2} & \frac{1}{2} & 0 & 0\\ 5 & 3 & 2 & 0 & 1 & 0 \\ 0 & 8 & 1 & 0 & 0 & 1 \end{pmatrix}→ \begin{pmatrix} 1 & \frac{3}{2} & \frac{1}{2} & \frac{1}{2} & 0 & 0 \\ 0 & -\frac{9}{2} & -\frac{1}{2} & -\frac{5}{2} & 1 & 0 \\ 0 & 8 & 1 & 0 & 0 & 1 \end{pmatrix} \]

\[ →\begin{pmatrix} 1 & \frac{3}{2} & \frac{1}{2} & \frac{1}{2} & 0 & 0 \\ 0 & 1 & \frac{1}{9} & \frac{5}{9} & -\frac{2}{9} & 0 \\ 0 & 8 & 1 & 0 & 0 & 1 \end{pmatrix}→ \begin{pmatrix} 1 & \frac{3}{2} & \frac{1}{2} & \frac{1}{2} & 0 & 0 \\ 0 & 1 & \frac{1}{9} & \frac{5}{9} & -\frac{2}{9} & 0 \\ 0 & 0 & \frac{1}{9} & -\frac{40}{9} & \frac{16}{9} & 1 \end{pmatrix}→ \begin{pmatrix} 1 & \frac{3}{2} & \frac{1}{2} & \frac{1}{2} & 0 & 0 \\ 0 & 1 & \frac{1}{9} & \frac{5}{9} & -\frac{2}{9} & 0 \\ 0 & 0 & 1 & -40 & \ 16 & 9 \end{pmatrix} \]

\[→ \begin{pmatrix} 1 & 0 & \frac{1}{3} & -\frac{1}{3} & \frac{1}{3} & 0 \\ 0 & 1 & \frac{1}{9} & \frac{5}{9} & -\frac{2}{9} & 0 \\ 0 & 0 & 1 & -40 & \ 16 & 9 \end{pmatrix} → \begin{pmatrix} 1 & 0 & 0 & 13 & -5 & -3 \\ 0 & 1 & 0 & 5 & -2 & -1 \\ 0 & 0 & 1 & -40 & \ 16 & 9 \end{pmatrix} \]

よって逆行列は,

\[ \begin{pmatrix} 13 & -5 & -3 \\ 5 & -2 & -1 \\ -40 & \ 16 & 9 \end{pmatrix} \]

行列式

1.2次・3次正方行列の行列式を求める方法として,サラスの方法(違う回で詳しく紹介)がある.これは,行列式の定義を利用することで証明することができる.今回,2次の場合は説明していた(行列式の定義を参照).これをもとに3次正方行列について行列式の定義から行列式を計算し3次の場合のサラスの方法を証明せよ.なお3次のサラスの方法は以下であり,3次正方行列Aは以下を用いよ.

\[ A = \begin{pmatrix} a_{11} & a_{12} & a_{13} \\ a_{21} & a_{22} & a_{23} \\ a_{31} & a_{32} & a_{33} \end{pmatrix} \]

\(det(A) = a_{11}a_{22}a_{33} + a_{13}a_{21}a_{32} + a_{12}a_{23}a_{31} -( a_{13}a_{22}a_{31} + a_{12}a_{21}a_{33} + a_{11}a_{23}a_{32}) \)

ans.

順列\((1, 2, 3)\)を考える.この順列の並び方は\(3! = 6\)通りあり,それは以下である.

\((1, 2, 3),(1, 3, 2),(2, 1, 3),(2, 3, 1),(3, 1, 2),(3, 2, 1)\)

次に,\((1, 2, 3)\)の転倒数は\(0 + 0 = 0\)より,その符号\(ε(1, 2, 3)\)は\(1\)である.

これをもとに,他の符号を考えると(二つの要素を入れ替えると符号が変わる),

\(ε(1, 2, 3) = 1,ε(1, 3, 2)=-1,ε(2, 1, 3)=-1,ε(2, 3, 1)=1,ε(3, 1, 2)=1,ε(3, 2, 1)=-1\)

よって行列式の定義から,

\(det(A) = ε(1, 2, 3)a_{11}a_{22}a_{33} + ε(1, 3, 2)a_{11}a_{23}a_{32} + ε(2, 1, 3)a_{12}a_{21}a_{33} \)

\(+ε(2, 3, 1)a_{12}a_{23}a_{31}+ε(3, 1, 2)a_{13}a_{21}a_{32} + ε(3, 2, 1)a_{13}a_{22}a_{31}\)

\(=a_{11}a_{22}a_{33} + a_{13}a_{21}a_{32} + a_{12}a_{23}a_{31} – ( a_{13}a_{22}a_{31} + a_{12}a_{21}a_{33} + a_{11}a_{23}a_{32}) \)

以上で3次のサラスの方法が証明された.

サラスの方法

1.以下の行列式の値を求めよ.

\[ (1) \begin{vmatrix} a & b & c \\ d & e & f \\ g & h & i \end{vmatrix} \]

ans.

\[ \begin{vmatrix} a & b & c \\ d & e & f \\ g & h & i \end{vmatrix} = aei + cdh + bfg -(ceg + afh + bdi)\]

\[ (2) \begin{vmatrix} cosθ & -sinθ \\ sinθ & cosθ \end{vmatrix} \]

ans.

\[\begin{vmatrix} cosθ & -sinθ \\ sinθ & cosθ \end{vmatrix} = cos^{2}θ – (-sin^{2}θ) = sin^{2}θ+cos^{2}θ = 1\]

※ \(sin^{2}θ+cos^{2}θ = 1\):三角関数の基本公式

4次以上の行列式

1.以下の行列式の値を求めよ.

\[ (1) \begin{vmatrix} 1 & 9 & 4 & 7 \\ 3 & 7 & 0 & 1 \\ 0 & 3 & 0 & 0 \\ 2 & 5 & 9 & 5 \end{vmatrix} \]

ans.

行列式の性質に基づいて計算していきます.

まず,第1列の(1, 1)成分以外を0にするために,第1行を仮定的に-3倍したものと第2行との和をとる, 第1行を仮定的に-2倍したものと第4行との和をとります.

\[\begin{vmatrix} 1 & 9 & 4 & 7 \\ 3 & 7 & 0 & 1 \\ 0 & 3 & 0 & 0 \\ 2 & 5 & 9 & 5 \end{vmatrix}= \begin{vmatrix} 1 & 9 & 4 & 7 \\ 0 & -20 & -12 & -20 \\ 0 & 3 & 0 & 0 \\ 0 & -13 & 1 & -9 \end{vmatrix}= \begin{vmatrix} -20 & -12 & -20 \\ 3 & 0 & 0 \\ -13 & 1 & -9 \end{vmatrix} \]

これで次数を4次から3次に下げることができました.ここで,さらに次数を下げにいっても良いのですが,0が多く含まれているのでサラスの方法の方が面倒じゃない匂いがしてます.なのでサラスの方法を使うと以下の解が求まります.

\[ \begin{vmatrix} -20 & -12 & -20 \\ 3 & 0 & 0 \\ -13 & 1 & -9 \end{vmatrix} = -60-324 = -384 \]

\[ (2) \begin{vmatrix} 1 & 1 & 1 & 1 \\ a & b & c & d \\ a^{2} & b^{2} & c^{2} & d^{2} \\ a^{3} & b^{3} & c^{3} & d^{3} \end{vmatrix} \textbf{(ヴァンデルモンドの行列式)}\]

ヒント:行だけでなく,列にも注目してみよう.

ans.

行列式の性質に基づいて計算していきます.これは少し癖のある行列式なので式変形を一つ一つ説明していきます.

まず,(4, 1)成分を0にするために,第3行を仮定的に-a倍したものと第4行との和をとります.

\[\begin{vmatrix} 1 & 1 & 1 & 1 \\ a & b & c & d \\ a^{2} & b^{2} & c^{2} & d^{2} \\ a^{3} & b^{3} & c^{3} & d^{3} \end{vmatrix}= \begin{vmatrix} 1 & 1 & 1 & 1 \\ a & b & c & d \\ a^{2} & b^{2} & c^{2} & d^{2} \\ 0 & b^{3}-ab^{2} & c^{3}-ac^{2} & d^{3}-ad^{2} \end{vmatrix} \]

次に(3,1)成分を0にするために,第2行を仮定的に-a倍したものと第3行との和をとります.

\[\begin{vmatrix} 1 & 1 & 1 & 1 \\ a & b & c & d \\ 0 & b^{2}-ab & c^{2}-ac & d^{2}-ad \\ 0 & b^{3}-ab^{2} & c^{3}-ac^{2} & d^{3}-ad^{2} \end{vmatrix} \]

次に(2,1)成分を0にするために,第1行を仮定的に-a倍したものと第2行との和をとります.

\[\begin{vmatrix} 1 & 1 & 1 & 1 \\ 0 & b-a & c-a & d-a \\ 0 & b^{2}-ab & c^{2}-ac & d^{2}-ad \\ 0 & b^{3}-ab^{2} & c^{3}-ac^{2} & d^{3}-ad^{2} \end{vmatrix}= \begin{vmatrix} b-a & c-a & d-a \\ b^{2}-ab & c^{2}-ac & d^{2}-ad \\ b^{3}-ab^{2} & c^{3}-ac^{2} & d^{3}-ad^{2} \end{vmatrix} \]

普段は上から要素を0にしていきますが,このように下から0にしていくことも可能です.

今度は列ごとに見ていきます.すると,第1列はb-a,第2列はc-a,第3列はd-aでくくれることに気づくでしょうか?つまり,

\[ \begin{vmatrix} b-a & c-a & d-a \\ b(b-a) & c(c-a) & d(d-a) \\ b^{2}(b-a) & c^{2}(c-a) & d^{2}(d-a) \end{vmatrix} \]

よって行列式を任意の定数でくくる場合は,行列式全体に掛けることができました.それを適用すると

\[ (b-a)(c-a)(d-a)\begin{vmatrix} 1 & 1 & 1 \\ b & c & d \\ b^{2} & c^{2} & d^{2} \end{vmatrix} \]

さらに次数を下げるために(2, 1)成分と(3, 1)成分を0します.よって,第2行を-b倍したものと第3行との和をとる,第1行を-b倍したものと第2行との和をとります.

\[ (b-a)(c-a)(d-a)\begin{vmatrix} 1 & 1 & 1 \\ 0 & c-b & d-b \\ 0 & c^{2}-bc & d^{2}-bd \end{vmatrix}= (b-a)(c-a)(d-a)\begin{vmatrix} c-b & d-b \\ c^{2}-bc & d^{2}-bd \end{vmatrix} \]

また同じように第1列をc-b,第2列をd-bでくくると

\[(b-a)(c-a)(d-a)\begin{vmatrix} c-b & d-b \\ c(c-b) & d(d-b) \end{vmatrix}= (b-a)(c-a)(d-a)(c-b)(d-b)\begin{vmatrix} 1 & 1 \\ c & d \end{vmatrix} \]

後はサラスで良いでしょう.よって解は

\((b-a)(c-a)(d-a)(c-b)(d-b)(d-c) \)

2.全てのIについて以下が成立することを数学的帰納法によって証明せよ.証明するさいは,2次単位行列から考えよ.

\(det(I) = 1\)・・・*

ans.

単位行列の次数を自然数nとし,Iの右下の数字はその次数を表す.

i) n = 2のとき

\[det(I_{2}) = \begin{vmatrix} 1 & 0 \\ 0 & 1\end{vmatrix} = 1・1-0・0=1\]

よってn=2のときは*を満たす.

ii)n = kのとき

*すなわち以下が成立すると仮定する.

\[det(I_{k}) = 1\]

このとき,n=k+1を考えると行列式の展開の過程で

\[det(I_{k+1}) = 1・det(I_{k}) = 1・1 = 1\]

となるので,これはn=k+1のとき*を満たすことを意味する.n=k+1が満たされるということは,仮定であるn=kのときも*を満たさないと矛盾する.よって,n=kは*を満たす.

i),ii)より,全ての次数において単位行列は*を満たす.

行列式と正則

1.以下の行列が正則であるかどうか調べよ.

\[ (1)\begin{pmatrix} 2 & 10 & 44 \\ 1 & 6 & 26 \\ 1 & 8 & 35 \end{pmatrix} \]

ans.

\[ \begin{vmatrix} 2 & 10 & 44 \\ 1 & 6 & 26 \\ 1 & 8 & 35 \end{vmatrix}= 2\begin{vmatrix} 1 & 5 & 22 \\ 1 & 6 & 26 \\ 1 & 8 & 35 \end{vmatrix}= 2\begin{vmatrix} 1 & 5 & 22 \\ 0 & 1 & 4 \\ 0 & 3 & 13 \end{vmatrix}= 2\begin{vmatrix} 1 & 4 \\ 3 & 13 \end{vmatrix} \]

\[= 2(13-12) = 2 ≠ 0 \]

よって正則である.

\[(2)\begin{pmatrix} 1 & 2 & 3 \\ 4 & 5 & 6 \\ 7 & 8 & 9 \end{pmatrix} \]

ans.

\[\begin{vmatrix} 1 & 2 & 3 \\ 4 & 5 & 6 \\ 7 & 8 & 9 \end{vmatrix}= \begin{vmatrix} 1 & 2 & 3 \\ 0 & -3 & -6 \\ 0 & -6 & -12 \end{vmatrix}= \begin{vmatrix} -3 & -6 \\ -6 & -12 \end{vmatrix} \]

\[=36-36 = 0\]

よって正則ではない.

※最後の式変形でサラスの方法を使わないで第2行が第1行の2倍だから0などでもOK.

余因子展開

1.以下の行列式を余因子展開を使って解け.

\[ (1) \begin{vmatrix} -2 & 0 & 0 \\ 1 & 1 & 3 \\ 3 & 4 & 6 \end{vmatrix} \]

ans.

第1列に関して余因子展開する.

\[ \begin{vmatrix} -2 & 0 & 0 \\ 1 & 1 & 3 \\ 3 & 4 & 6 \end{vmatrix} = -2・(-1)^{1+1}(6-12)+1・(-1)^{2+1}(0-0)+3・(-1)^{3+1}(0-0)=12\]

\[ (2) \begin{vmatrix} 2 & 1 & 8 \\ 3 & 7 & 5 \\ 4 & 4 & 3 \end{vmatrix} \]

ans.

第2行に関して余因子展開する.

\[\begin{vmatrix} 2 & 1 & 8 \\ 3 & 7 & 5 \\ 4 & 4 & 3 \end{vmatrix}=3・(-1)^{2+1}(3-32)+7・(-1)^{2+2}(6-32)+5・(-1)^{2+3}(8-4) = 87 -182 -20 = -115 \]

クラメルの公式

1.以下の連立一次方程式をクラメルの公式によって解け.

\[ \left \{ \begin{array}{} x_{1} + x_{2} + x_{3} = 4 \\ 2x_{1} + x_{2} + x_{3} = 6 \\ x_{1} -x_{2} + 2x_{3} = 3 \end{array} \right . \]

ans.

係数行列と右辺の列ベクトルは以下である.

\[\begin{pmatrix} 1 & 1 & 1 \\ 2 & 1 & 1 \\ 1 & -1 & 2 \end{pmatrix}  \begin{pmatrix} 4 \\ 6 \\ 3 \end{pmatrix} \]

係数行列が正則であるかどうか調べる.

\[\begin{vmatrix} 1 & 1 & 1 \\ 2 & 1 & 1 \\ 1 & -1 & 2 \end{vmatrix} = 2+1-2-(1+4-1) = 1-4 = -3≠0\]

よってクラメルの公式を適用すると,

\[x_{1} = -\frac{1}{3}\begin{vmatrix} 4 & 1 & 1 \\ 6 & 1 & 1 \\ 3 & -1 & 2 \end{vmatrix} = -\frac{1}{3}\{8+3-6-(3+12-4)\}= -\frac{1}{3}(5-11) = 2\]

\[x_{2} = -\frac{1}{3}\begin{vmatrix} 1 & 4 & 1 \\ 2 & 6 & 1 \\ 1 & 3 & 2 \end{vmatrix} = -\frac{1}{3}\{12+6+4-(6+16+3)\}= -\frac{1}{3}(22-25) = 1\]

\[x_{3} = -\frac{1}{3}\begin{vmatrix} 1 & 1 & 4 \\ 2 & 1 & 6 \\ 1 & -1 & 3 \end{vmatrix} = -\frac{1}{3}\{3+6-8-(4+6-6)\}= -\frac{1}{3}(1-4) = 1\]

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