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線形代数 連立一次方程式の解の存在条件

ここでは,大学で習う線形代数についての基本を説明していきます.また,対象は特に問いません.数学が苦手な方でも理解しやすいような例を利用しているので安心して読み進めてください.なお,当サイトの線形代数の進め方について知りたい方は以下をクリック.

線形代数の進め方

この回では,連立一次方程式の解が存在するかどうかを行列を利用して確かめる方法について説明していきます.なお,掃き出し法による連立一次方程式の解き方が分からない方は以下を先に読むことをおすすめします.

掃き出し法

キーワード:階数、rank、階段化、係数行列、拡大係数行列、掃き出し法

行列の階数

行列の階数とは,連立一次方程式の拡大係数行列を掃き出し法によって階段化したさいに,係数行列部分の零ベクトルでない行の数のことをいいます.

階数は係数行列をAとすると rankA で表されます.

実際に行列の階数を求めてみましょう.以下の例を使います.

\[ \left \{\begin{array}{} 2x_{1} -2x_{2} -3x_{3}&= 2 \\ 10x_{1} -15x_{2} -15x_{3}&= 20 \\ 4x_{1} -4x_{2} -3x_{3}&= 7\end{array} \right . \]

係数行列をA,右辺の列ベクトルをbとし,拡大係数行列を(A, b)とすると,

\[ (A, b) = \begin{pmatrix} 2 & -2 & -3 & 2 \\ 10 & -15 & -15 & 20 \\ 4 & -4 & -3 & 7 \end{pmatrix} \]

これを掃き出し法により,階段化していきます.

\[ \begin{pmatrix} 2 & -2 & -3 & 2 \\ 10 & -15 & -15 & 20 \\ 4 & -4 & -3 & 7 \end{pmatrix} → \begin{pmatrix} 1 & -1 & -\frac{3}{2} & 1 \\ 10 & -15 & -15 & 20 \\ 4 & -4 & -3 & 7 \end{pmatrix} → \begin{pmatrix} 1 & -1 & -\frac{3}{2} & 1 \\ 0 & -5 & 0 & 10 \\ 0 & 0 & 3 & 3 \end{pmatrix} \]

\[ → \begin{pmatrix} 1 & -1 & -\frac{3}{2} & 1 \\ 0 & 1 & 0 & -2 \\ 0 & 0 & 3 & 3 \end{pmatrix} → \begin{pmatrix} 1 & -1 & -\frac{3}{2} & 1 \\ 0 & 1 & 0 & -2 \\ 0 & 0 & 3 & 3 \end{pmatrix} → \begin{pmatrix} 1 & -1 & -\frac{3}{2} & 1 \\ 0 & 1 & 0 & -2 \\ 0 & 0 & 1 & 1 \end{pmatrix} \]

\[ → \begin{pmatrix} 1 & 0 & -\frac{3}{2} & -1 \\ 0 & 1 & 0 & -2 \\ 0 & 0 & 1 & 1 \end{pmatrix} → \begin{pmatrix} 1 & 0 & 0 & \frac{1}{2} \\ 0 & 1 & 0 & -2 \\ 0 & 0 & 1 & 1 \end{pmatrix} \]

以上より,係数行列Aにおいては,零ベクトルでない行の数は3より,

rankA = 3と分かります.今回は全て階段化しましたが,慣れてくると上の一段目の最後の式変形辺りでrankA = 3であると検討がつくようになります.

この階数の概念は,解が存在しているかどうかや他の回で説明する解の種類を見極めるのに利用できるのでしっかり覚えましょう.

解の存在条件

係数行列の階数を知っておくことで,その連立一次方程式が解を持つかどうかを調べることができます.

一般に連立一次方程式が解を持つとき,以下が成り立ちます.

Aを係数行列,bを各方程式の右辺の列ベクトル,(A, b)を拡大係数行列とすると,ある連立一次方程式が解を持つには以下が成立している必要がある.

rank(A, b) = rankA

つまり,拡大係数行列と係数行列の階数が等しいとき,その連立一次方程式が解を持ちます.

先ほどの例で再び見てみると,

\[ (A, b) = \begin{pmatrix} 2 & -2 & -3 & 2 \\ 10 & -15 & -15 & 20 \\ 4 & -4 & -3 & 7 \end{pmatrix} \]

\[ \textbf{階段化した(A, b)} = \begin{pmatrix} 1 & 0 & 0 & \frac{1}{2} \\ 0 & 1 & 0 & -2 \\ 0 & 0 & 1 & 1 \end{pmatrix} \]

rank(A, b) = rankAとなっているので,確かに解\(x_{1} = \frac{1}{2}, x_{2} = -2, x_{3} = 1\)を持つことが分かります.

まとめ

1.行列の階数とは,拡大係数行列の係数行列部分を階段化したさいに,零ベクトルでない行の数のことをいい,係数行列をAとすると,rankA表す.

2.連立一次方程式が解を持つには,以下が成り立つときである.ただし,係数行列をA,各方程式の右辺の列ベクトルをb,拡大係数行列を(A, b)とする.

rank(A, b) = rankA

練習問題

1.以下の拡大係数行列が解を持つかどうか,掃き出し法により階段化し,その真偽を確かめよ.

\[ (1) \begin{pmatrix} 1 & 1 & 1 & 3 \\ 2 & 1 & 2 & 5 \\ 4 & 2 & 6 & 12 \end{pmatrix} \]

\[ (2) \begin{pmatrix} 1 & -1 & 1 & 2 \\ 2 & 1 & -2 & 3 \\ 1 & 5 & -7 & 1 \end{pmatrix} \]

解答はこちら → 練習問題解答

tomo

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